血縁話〜その2

 息子は自分のお父さんに会ったことがありません、生まれてから。
 息子が私のお腹にいることが判明したとき、お父さんである人は、すでにモロカイ島を離れていており(これも推測だけど、笑)、居所が分からなかったからです。

 お父さんである人は、敬虔なクリスチャン、というわけでもなかったけれど、全ての存在を肯定的に捉えているような人でした。中国発祥の干支にも詳しかったし、その当時、今思えば、オーラとかチャクラの話もしていたような・・神様の存在もそんな話の中にあったような・・・

 モロカイ島の西端のPapohakubeachで遊んでいるとき、そのときはかなり波が高かったのです。頭の高さは余裕で越えていました。
 「恐ろしい〜」と海に入ることを当然のように諦めた友人をヨソに、笑、私と彼は、ドルフィンスイムしながら、大きな波の下を潜り抜けて、一気に穏やかな波打ち際の向こう側へ泳いで行ったりしていました。
 そのとき。

 彼は。
 海に入る前に、 胸の前で十字を切っていたことを。
 鮮明に覚えています。

 「海に入るときには、何が起こるかわからないんだよ。海の神様に対して謙虚な心がないと、海に飲まれてしまうんだ。だから、ボクは、海に入る前には、こうして、Cross my Heart。祈るんだよ。そして感謝を捧げるんだよ」

 って。言っていました。「この人、すごいなぁ、」ってそのとき、思いました。その日のモロカイ島は、満月でした。

 先週。種子島と屋久島の海で。

 息子は。
 海に入る前に。
 こう言っていました。

 「海の神様ぁぁぁ〜〜!!愛してるよー!!ありがとー!」
 そして、ジャボーンンっ。と海に飛び込んでいました。
 そんなこと教えた記憶は、私にはありません。

 私が常に彼に言っていることは、「自然、という存在に感謝してね」っていうことだけ。

 「この息子、すごいなぁ、」って。
 そのとき、思いました。笑。最初に海に行った日の屋久島は、皆既月食の日でした。


 恐るべし。血のつながりとは。


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